

子どもの「やる気スイッチ」入れ方実践編②~言い訳しがちな子どもの心理と、苦手なことへのチャレンジ~
2018.05.02
「ベルメゾン×やる気スイッチグループ」コラボ企画!連載3回目となる今回は、引き続きモニターママの「やる気スイッチ流子育て」実践レポートをお届けします。今回登場するのは、初めての子育てに奮闘中のママさん。お悩みは”苦手克服への挑戦”と“言い訳グセ”、“飽きっぽさ”だそうです。
■やる気スイッチグループ
シニアコンサルタント
■佐藤 広康さん
*プロフィール*
小・中学校の校長や教諭などへの現職教育、塾講師などへのコーチング研修、保護者への子育て講演など、教育関係の研修実績は1万人を超える。大手自動車会社、外資系企業をはじめ、世界的な優良企業でも研修を行う。心と心のふれあいを大切にする人材育成のスペシャリスト。2児の父。
お悩み解決編・第1弾で、モニターママのお悩みを解決へと導いてくださった佐藤さん。
今回も引き続きご登場いただきます!
モニターママには、やる気スイッチグループ独自の診断「子育て応援Navi」を受けてもらい、お悩み内容を書いたシートと共に提出。
やる気スイッチさんで診断結果が出た後に面談を行い、お悩みに沿ったアドバイスを伝授してもらいました。
今回ご登場いただくモニターママは、初めての子育てに奮闘中のワーキングマザー・Sママさんです!
Sママの家族構成は……
【Sママ家族】
・Sママ(42歳)
……初めての子育てを頑張っている兼業主婦。やるべきことはきっちりこなすタイプ。子どもの育て方については、旦那さんとじっくり話し合って決めている。
・夫(43歳)
・長女(4歳10ヵ月・幼稚園の年中クラス)
……おしゃべりとおままごとが好きで、お絵かきが得意。仲の良いお友だちや身近な大人とは積極的に話す一方、初めて会う人には人見知りする一面も。人に対してだけでなく、未知の物事に対する警戒心(?)が強く、食べ物でも行動でも、慣れないうちは慎重になりがち。
【Sママのタイプと傾向】
Sママは「結果タイプ」でした。子どもさんへの愛情がとても強く、たくさんの経験をさせてあげたいと考え、実行していることが診断からわかります。ただ、個性を尊重しようとするあまり、少し放任な部分があるようです。
【娘さんのタイプと傾向】
娘さんも、Sママと同じく「結果タイプ」でした。また、ふだんの生活でいろいろなことに興味を持っていて、それができるようになりたいと思っている様子。結果タイプの特徴は、目標があれば頑張れることと、結果が出ていないのに「頑張ってるね」と言われても嬉しくないという点です。
【Sママが娘さんに接する際のポイント】
二人とも、努力する過程やこだわりよりもやり遂げた時の結果を重視する「結果タイプ」。
娘さんが何かにチャレンジして結果を出した時は、その成果を思いっきり褒めてあげることで「やる気スイッチ」が入り、より実力が伸びますよ。
親子そろって同じタイプなので、Sママ自身は、娘さんが“褒められてうれしい”と感じる点を理解しやすいのではないでしょうか。
ただ、ここで気を付けたいのは、親御さんの期待値が高いと、子どもなりに出した(親にとっては些細な)成果をスルーしてしまう場合があるということ。
もしそういったことが重なると、子どもは「認めてもらえない」とやる気を失ってしまいます。
これを防ぐには、目標を一緒に設定することが大切。
娘さんが興味を持っていることの中から、一人でできることを見つけて挑戦を促すとともに、ちょっとしたアドバイスなどで結果が出るようにさりげなくサポートしてあげてください。
また、もう1点、気にかけてほしい点があって、それは二人の物事のとらえ方の違いについてです。少し詳しくご紹介しましょう。
少し話が逸れますが、コミュニケーションの取り方についてお話ししておきます。これは「努力」「結果」「こだわり」の3つのタイプとは、また別の話。
人は、考えや想いを伝える・物事を考える時の傾向で3つに分類することができます。
理論派=言語を軸に論理的な筋道で考える人
感覚派=イメージや感覚で物事を考える人
バランス派=理論も感覚も必要とする人
この観点から見た時、今回のSママは“バランス派”で、娘さんは“感覚派”のようです。
つまり、Sママが娘さんに何かを説明する際に「子どもにもわかりやすいよう、理論立ててきっちり説明した」と思っていても、イメージや感覚で物事をとらえる娘さんには伝わっておらず「???」となっている可能性が高いということ。
“感覚派”の子どもに何かを伝える時は、たとえ話や例題などで、イメージが湧くように話してあげることが大切。また、褒める時には、感覚的に受け取れるようにテンション高く振る舞ってあげるなどするとストレートに伝わりますよ。
この点に留意してコミュニケーションを取れば、今よりももっと上手にお互いの思いや考えを伝え合えるようになるでしょう。
さらに、娘さんのコミュニケーション能力をアップさせるには、感覚を言語化するサポートをしてあげましょう。娘さんが「これスゴイ!」と言ったら、「どこがスゴイのかママに教えて」と具体的に聞いてみて、うまく言葉が出ないようだったら、「可愛い? かっこいい?」「スゴイのは色かな、形かな?」など誘導してあげると良いですよ。
【お悩み①】
苦手な遊具にチャレンジできない
公園にあるジャングルジムや鉄棒など、体のバランスが必要な遊具が苦手らしく、なかなかチャレンジしてくれません。パパやママが補助するから安全だよと説明しても、頑なに拒否します。
このことに限らず、未知のものへの警戒心がすごく強い気がします。苦手意識や怖さを取り払ってあげたいのですが、どうしたら良いのかかわかりません。
【お悩み②】
子どもに言い訳グセがついている?
自分がしたくないことに対して、嘘を混ぜながら言い訳を並べ、都合のいい方向へ持っていこうとするところに困っています。例えば、
・「片づけなさい」と叱れば「しようと思ってるけど、足がしびれてできない」と返事
・嫌いな食べ物だけ残し「お腹が痛くなってきた」と席を外す
……などなど。
このままだと、嘘をつくことや、苦手なことから逃げるクセがつくのではないかと心配です。まだ幼く、家庭内でのことなので甘やかし気味にしてきましたが、それがいけなかったのでしょうか。どんな伝え方をすれば、素直に納得して言うことをきくようになるのでしょうか。
【お悩み③】
興味を持ったことへの意欲を継続させたい
初めてのお稽古ごとは、子どもが「やりたい!」と言った1ヵ月限定の聖歌隊でした。初めは意欲十分だったのに、2週間も経つと飽きた様子で練習しなくなってしまい……。気分を盛り上げようと応援したのですが、うまくいきませんでした。
今後も興味を持つことは習わせてあげたいと思っています。私自身、小さい頃に始めた習いごとを長く続けて良かったと思っているので、娘にも一度始めたことは意欲を持って続けられる子になってほしい。でも、日頃から「少し飽き性かな?」と感じることがあります。どうすれば良いでしょうか?
まずは【お悩み①苦手克服の方法】について。
どうしてチャレンジしないのか? ズバリ自信がないからです。では、なぜ自信がないのか? それは「失敗してはダメだ」「できないことは悪いこと」だと思い込んでしまっているんです。
自信がないまま=失敗はダメと思って挑戦→失敗すると、「失敗した私はダメなんだ」と自分で自分を責める。その心の苦しさを味わいたくないために「そんな思いをするくらいなら、挑戦なんてしない」となっているんでしょう。
診断の結果からも、娘さんはいろんなことに興味を持っていて、自分なりのチャレンジも頑張っている様子がうかがえます。気になるのは、親子そろって同じ「結果タイプ」なのですが、ママの期待値が高いために、“娘さんなりの結果”を認めてあげることが不足しているのではないかという点。
娘さんは「褒めてもらえていない=私はダメだ」と自分を否定し、自信を失ってしまっているのかも知れません。
この状況を打破するには「失敗はダメ」と思い込んでしまっている娘さんを「失敗しないことよりも、成長・成功が大切」という考え方に変えてあげることです。
そのために必要なのが、必ず達成できる目標を立てさせてあげること。「必ず達成できる」という部分がポイントです。
例えば、ジャングルジムに登れない現状に対して、まずは「ジャングルジムに手をかける」を目標にします。ジャングルジムの棒を持って、手を離すだけでOK。これなら必ずできるでしょう? それができたら、「1段目に登る」「2段目に登る」……と目標を少しずつ上げていきます。
もちろん、一つの目標を達成するごとに必ず褒めてあげることを忘れずに。
目標があると前向きになれるのが、結果タイプの良いところ。逆に目標を見失うと、やる気を失ったり投げやりになってしまう傾向があるんです。
最初から高い目標を掲げると、結果が出せず落ち込んでしまう。でも、必ずできる身近な目標から始めれば、娘さんは達成する喜びで気持ちにはずみがつき、自信を持って、少しずつ高い目標へ進んでいけるはずですよ。
【お悩み②言い訳をしてしまう】について。
すぐに言い訳する心理として考えられるのは、
[A]
結果を出せない自分を受け入れられず、言い訳をしてしまう
[B]
親に対する返事が、言い訳(に聞こえる言葉)しか用意できない
の2パターンです。
Aの「結果を出せない自分」に関しては、お悩み①でも触れました。これは、自信をつけさせてあげることでゆっくり解消していくでしょう。
もう一つ、Bに関しては、Sママの「どうしてできないの?」といった問いかけが、娘さんを否定する言葉に聞こえてしまっているのではないでしょうか。
ママに対して何か答えを用意しないといけない、でも「自分がダメだから」と答えるのは娘さん自身がツライ。怒られなさそうな回答をムリヤリ用意した結果が“言い訳”になってしまっているのだと思います。
解決法としては……娘さんが言い訳しないで済むように、積極的に動けるように、ママが誘導してあげること。
例えばお片付けができない時。まだ小さい子どもは、ご褒美で釣るのもアリです。「お菓子食べたい人~?」と言えば、娘さんはきっと「はい!」とお返事するでしょう。そこで「じゃあ、ママと一緒にお片付けしてから食べようか」と。
ここでのポイントは、約束が終わるまでご褒美を目の前に出さないこと。片付ける前にお菓子を見てしまうと、娘さんは気が散ってしまいます。
また、お悩み①と同じように、いきなり完璧な結果を望まないこと。まずは、ぐちゃぐちゃでもおもちゃをケースに入れればOK。少しずつレベルを上げて、スモールステップでできることを増やしていくと、結果タイプの娘さんは伸びますよ。
最後は【お悩み③意欲の継続】について。
子どもに習い事をさせるにあたって、まず大切にしてほしいのは子どもがやりたいことをさせてあげるということです。「一度始めたから続けさせる」→「一度始めたから」という理由だけで興味が無くなった後も続けさせるというのはおすすめできません。
なぜなら、自分の人生に対する興味・関心が十分育っていない子に対しては「無気力スイッチ」を押してしまうことになるから。そうならないために、まず先に踏んでいただきたいステップがあります。
それは、自分自身への興味・関心を育てるというステップです。
人間って、興味・関心のないことには意欲が湧きませんよね。興味・関心の高さは、意欲の高さと比例するんです。もっと言うと興味・関心の範囲は、意欲を湧かせ、大切にでき、責任や希望を感じる範囲に比例します。
例えば野球が好きな人は、応援するチームの試合を見るし、そのチームが勝つと嬉しい。ドラフト会議なんかも注目するでしょう。応援に意欲も湧くし、チームを大切にして、優勝して欲しいと希望を感じるでしょう。
この興味・関心はやる気スイッチの土台と言っても過言ではないものです。
もし、子どもが自分自身に興味・関心が持てなかったら、「自分の人生を良くすることに意欲が湧かない」「自分自身を大切にできない」「 未来に希望が持てない」「人生に責任を持てない」……しあわせになるための「やる気スイッチ」が入らないという状態になってしまいます。
子どものやる気スイッチを入れるには、まず子どもの自分自身に対する興味・関心を育てるステップが重要になります。
具体的には、親が子どもの興味・関心事を肯定してあげると、子どもの自分自身に対する興味・関心や自分を肯定する感覚を育てることができます。
逆に興味・関心事を否定すると自分自身への興味・関心を無くしてしまい、どんどん無気力になってしまいます。
もし、興味・関心を肯定してあげるつもりで始めた習いごとが、「続けさせる」という目的のために他の興味・関心を否定する存在になってしまったら? 自分自身への興味・関心を無くす「無気力スイッチ」を押してしまうことになり、本末転倒です。
子どもは自分自身への興味・関心が育つ事で人生のやる気スイッチが入ります。人生のやる気スイッチが入れば、たとえ大変なことでもきちんと続けられる人になります。
子どもさんが興味を持って始めても、「これは違うかな?」という様子であれば、きちんと子どもの話を聞き、時には見切りをつける勇気を親が持ってあげてください。
もし辞めることが何回か続いたとしても、子どもさんが好む傾向が見えてくるでしょうし、きっともっと意欲を持って臨めることに出会えますよ。
子どもさんが意欲の続く習い事に出会えたら、思いっきり応援してあげてくださいね。
これまでは、娘が失敗することがあっても頑張った部分を褒めて慰めているつもりでした。でもそれは「結果タイプ」の娘にはうれしくない接し方だったのか! と驚きです。
「まずは必ず達成できる目標から」という方法、さっそく試してみたいと思います。
また「どうしてできないの?」という問いかけが、娘にとっては自身の否定に聞こえるという話、グサッと胸にきました。
子どもが言い訳をするたびに「どうしてこんなに言い訳をするんだろう」と思っていたのですが、私のそんな気持ちや聞き方こそが、言い訳をさせてしまっているのだと聞き、子どもに申し訳ない気持ちになりました。
これまで自信を失わせてしまっていたのだとしたら、これからはどんどん自信をつけさせてあげたい。
家族の方針として進められるよう、夫にも教えていただいたことを伝えます!
Sママに「やる気スイッチ流子育て」を実践してもらった後、再び面談を実施。果たして、その結果はいかに!? 娘さんに変化は見られたのでしょうか?
◎子育てのイライラが減った!
一番効果を感じたのは、私自身の子どもに対するイライラが減ったことです。心構えが変わったからかな?
まず、先生に指摘してもらった「ママの目標設定が高すぎる」に気を付けて、娘が守れるような約束ごとをするようにしたら、娘はきちんと約束を果たせるし、私は娘を褒めることができるしでイイコトづくめでした。
例えば、娘はテレビに熱中しているとお風呂を嫌がることがあるのですが「このコーナーが終わったらお風呂入ろうね」と事前に約束(目標を設定)して、それができたら「ちゃんと約束を守れたね! すごい、もうすっかりお姉ちゃんだ!」と褒めるようにしました。すると、お姉ちゃんと言われることが嬉しいようで、何かあると「お姉ちゃんみたい?」と聞いてくるようになりました。
◎自信を持ち始め、言い訳が減った気がします
また「保育園ですごく長い距離を散歩した」と話してくれた時には「すごい! たくさん歩いたね。お母さんはそんなに長く歩けないよ~」と何度も褒めると「うん! すごいやろ?」と自信を持った様子。
最近では言い訳も減ったように感じます!
◎子どもの新たな一面を発見
先生のお話を伺って、子どもがやってみたがることは、なるべくさせてあげようと思い直しました。
これまでは、家で工作をしたがる時に「テープの無駄使いしないでね」なんて言っていたんですが、先日は口出しせず好きなだけ使わせてみました。すると、ビニール袋で一生懸命に服を作ったり、段ボールで車を作ったりと長いこと熱中している様子。
あまり集中力が続くタイプではないと思っていたのに、娘の思いがけない一面を見られて、とにかく驚くやら嬉しいやら。
これからも、好きなことはケチらずさせてあげようと思いました。
親も子も、気持ちよく過ごせているのでこれからも「やる気スイッチ流子育て」を続けていきたい、と強く感じました。
たまたまかも知れませんが、最近は幼稚園のお友だちとの楽しかったエピソードもたくさん話してくれます。もしかすると、私の褒め方が上手になったことで、娘が自分に対して肯定的になっているのでは……と期待しています。
ちょっとタイミングがなくて、まだジャングルジムへのある公園は行けていないのですが、鉄棒のチャレンジは始めました。
「小さな目標を立てて、達成を一緒に喜び、自信をつけさせる」。まずはこれを継続していって、少しずつチャレンジ精神が育てばと、娘に対して気長に構えられるようになりました!
親は、子どもが失敗しそうな時、かわいそうに思ってアレコレと手を差し伸べますよね。でも、その行動こそが「失敗はだめなこと」と子どもに思わせてしまう原因。
子どもさんには「失敗は怖くない」「成功しなくてもママは私を愛してくれている」「諦めないことが大事なんだ」としっかり伝え、チャレンジそのものを褒めてあげてください。
また、結果タイプの娘さんには、ネガティブな考えを辿りやすい「どうして失敗したのか」という問いかけはNG。「次はどうすれば成功できそう?」と問いかけ、ポジティブな未来を想像させて、子どもを肯定してあげる。これが大切です。
娘さんはすでに4歳なので、「失敗はダメだ」という思い込みは簡単には払拭できないかも知れません。気長に伝えてあげて、経験を通して自然と納得できるよう、導いてあげてくだださいね。
今回は、「チャレンジ精神の育て方について」「子どもの意欲を継続させる方法」「子どもが言い訳する心理は?」とお悩みのSママの実践レポートでした。
「うちの子もそう!」とうなずきながらご覧になった親御さんも多いのでは? 今回の記事をぜひ参考に、褒めて伸ばす「やる気スイッチ流子育て」を実践してみてくださいね!
連載はまだまだ続きます。次回は男の子のきょうだいを持つママさんが登場。ぜひお楽しみに!