ホットフラッシュ
(汗悩み・冷えのぼせなど)

笑ったりくしゃみをしたり、荷物をもって立ち上がろうとしたときなど、お腹に力がかかった瞬間に、ふともれてしまう…。こんなタイプの尿漏れを「腹圧性尿失禁」といいます。
原因となるのは、子宮などの臓器を支えている骨盤底筋という筋肉群のゆるみと考えられます。
骨盤底筋って何?
ゆるむとはどういうこと?
ゆるんでいるかなと感じたときのセルフケアについて、解説していきましょう。

お腹の中にある骨盤を、底の抜けた洗面器に見立ててイメ―ジしてみてください。洗面器の上に網目状のハンモックをかけたようにあるのが骨盤底筋です。このハンモックの上に、膀胱、子宮、直腸という骨盤内の臓器がのっていて、洗面器の底から脱出しないように支えているのです。
女性にとって、骨盤底筋のゆるみにつながる大事件が出産と分娩です。妊娠中、だんだん重くなる子宮を支えるために骨盤底筋にはすでに負担がかかっていますが、分娩時には骨盤の広がりとともに、3倍以上にもひきのばされることもあるといいます。まさに、「伸びきったゴムのように」なってしまってもおかしくはありません。このときのゆるみがきっかけで、更年期世代になり尿もれが起こることも多いと言われています。
この他、重いものを持ち上げたり運んだりする仕事は、お腹にグッと力を入れることにより骨盤底筋に負担がかかり、徐々に伸びてゆるみやすくなります。看護師、介護福祉士、保育士、物流・運送業、建設業の方などはこれにあてはまるかもしれません。
一方、デスクワークや車のドライバーなどで座りっぱなしの仕事も、骨盤内の臓器が圧迫されており、血流が悪くなって筋力が低下します。
太りすぎ(肥満)の場合も、お腹のまわりについた脂肪の重みが骨盤底筋にのしかかり、ゆるみの原因になっていきます。
こうしてみますと、現代を生きる女性では、さまざまな要因が骨盤底筋のゆるみにつながっています。女性ホルモンには、筋肉の弾力や靭帯の柔軟性を保つ働きがありますが、閉経後はエストロゲンの守りがなくなるために弾力を失った骨盤底筋群が緩みます。さらに加齢による筋力低下ももちろんリスクですから、更年期世代では誰しもゆるみを感じる時期はあるかもしれません。
骨盤底筋のゆるみによる尿もれを「週1回以上経験している」という女性は500万人以上もいて、40代以上の8人に1人は困っているということになります。
(参考:2003年日本排尿機能学会による大規模調査他)
骨盤底筋のゆるみは、尿もれの原因になるだけではありません。
子宮や直腸などの臓器を支える力が本当に低下すると、子宮や腸が体から突出してしまう「骨盤臓器脱」という大きな病気につながることがあります。
ちょっとした尿もれは、むしろ骨盤底筋のゆるみに気づくチャンスかもしれません。気づいたときから、骨盤底筋対策を始めるきっかけにしていきましょう。
【要注意】切迫性尿失禁
なお、尿もれには腹圧性尿失禁以外に「切迫性尿失禁」があります。こちらは「急に強い尿意が襲ってきて、トイレまで我慢できない」という症状です。膀胱が過敏になり、コントロールできない「過活動膀胱」や、ぼうこう炎による頻尿、子宮筋腫に圧迫されて尿意が高まるなどの原因が考えられます。
腹圧性尿失禁とは、発生するメカニズムも原因も全く違い、骨盤底筋体操はむしろ逆効果になる場合もあります。
中には、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が同時に起きている場合もあります。自分の尿もれがどのタイプかわからないときは自己診断せず、更年期医療や骨盤臓器脱に詳しい婦人科、女性泌尿器科に相談してください。

ちょっとした尿もれも、ネガティブに考えると生活の楽しみや心のゆとりを妨げます。いつもれるかわからない不安から、旅行やスポーツ、友人とのお茶会に出かけるのにも臆病になってしまう人もいます。家にこもりがちになると運動不足で筋力も低下しますし、メリハリのない生活から不眠が起こるなど、更年期の心と体の症状にもよくない影響が起こります。
むしろ、骨盤底筋体操をとりいれるチャンスととらえて、毎日の習慣にしていきましょう。
一般的な骨盤底筋体操とケーゲル体操をご紹介します。どちらも必ず、排尿をすませてから行ってください。
【骨盤底筋体操】
1)体全体をリラックスさせ、「腟・尿道・肛門」に意識を集中させてキュッと締める
2)息を吸いながら「締める」、息を吐いて「ゆるめる」を短いサイクルで10回繰り返す
3)これを1クールとして、10回繰り返す
立っても、座ってもできる体操です。家事の合間、通勤途中など、すき間時間を利用して、一日100回にチャレンジしましょう。
【ケーゲル体操】
1)仰向けに寝てひざをたてる
2)呼吸をとめずに腰を高く上げて「肛門・腟・尿道」を締めながら4~5秒キープする
3)息を吐きながら腰を下ろす
朝晩はこれも取り入れてみましょう。